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2006年6月6日その2

「鉄道よもやま話」を更新しました
「鉄道よもやま話」に「合理化と運転事故との関連性を探る」を追加しました。

  • 2006.06.06 Tuesday
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合理化と運転事故との関連性を探る

1km当たり何円で列車は走るのか

 今回は、列車を1km走らせるのに必要な経費、そして1件の運転事故は列車がどれだけの距離を走行すると起きてしまうのかを調べ、鉄道会社の合理化について考えてみたい。例によって『平成15年度 鉄道統計年報』(国土交通省鉄道局監修、政府資料等普及調査会、2005年3月)を使用する。参照したのは66ページ〜79ページの「(4)営業キロ及び走行キロ表(2)」、632ページ〜635ページの「(23)JR旅客会社、大手民鉄及び地下鉄事業者の基準単価及び基準コストの算定に係るデータ一覧」、598ページ〜613ページの「(19)運転事故調査票」だ。
 車両や列車を運転するための経費は運送費と呼ばれる。その内訳は線路保存費、電路保存費、車両保存費、運転費、運輸費、保守管理費、輸送管理費だ。これらは鉄道事業会計規則(昭和六十二年二月二十日運輸省令第七号)で定められた勘定項目である。保存費とは維持補修に要する作業費、管理費とは作業管理などに要する費用を表す。言い換えれば、費用のうち、現業部門のものは保存費、本社部門のものは管理費である。
 いくつか補足しておこう。電路保存費とは架線など電車線路と呼ばれる設備や変電所、通信機械などの維持補修に要する作業費を指す。運転費には運転士や車掌などの人件費や車両が用いる動力費などが含まれる。駅員の人件費や自動改札機のメンテナンス費など、駅に関する費用が計上されているのは運輸費だ。
 JR旅客会社6社と大手民鉄16社をモデルに列車キロと運送費との関係を表1にまとめてみた。筆者の予想よりもばらつきが目立ち、その差はJR旅客会社内、大手民鉄内ともに大きい。



 この数値が1000円台と低かったのは名古屋鉄道、西日本鉄道、JR四国、近畿日本鉄道、JR九州、阪神電気鉄道、南海電気鉄道の7社だった。前回取り上げた「現業部門の職員1人が受け持つ1日当たりの列車キロ」との関連が見られる。この数値が30km以上を記録しているとして取り上げた阪急電鉄、近畿日本鉄道、西日本鉄道、名古屋鉄道、JR九州の5社のうち、阪急電鉄を除く4社の数値は1000円台だ。
 現業部門の職員数を減らせば人件費も減り、運送費も減少するので驚く必要はない。「列車キロ1km当たりの運送費」の平均値である2976円以下である鉄道会社が22社中、17社に達している点に着目すべきだ。むしろ、平均値を上回っている帝都高速度交通営団(現在の東京地下鉄)、JR東海、東京急行電鉄、JR東日本、相模鉄道の5社に何か特別な事情が隠されているのかもしれない。

運転事故の統計から判明する意外な事実

 続いて深刻な数値を紹介しよう。表2をご覧いただきたい。列車の走行距離と運転事故との関係をまとめたものだ。国土交通省は列車の走行距離100万km当たりの運転事故件数としているが、これでは少々わかりにくい。そこで運転事故1件当たりの列車走行キロ、つまりどれだけ列車が走れば事故が起きるのかという生々しいデータを算出することとした。
 運転事故とは鉄道事故等報告規則(昭和六十二年二月二十日運輸省令第八号)と軌道事故等報告規則(昭和六十二年三月二十七日運輸省建設省告示第一号)とによって規定されたものだ。前者には列車衝突事故、列車脱線事故、列車火災事故、踏切障害事故、道路障害事故、人身障害事故、物損事故、後者には車両衝突事故、車両脱線事故、車両火災事故、踏切障害事故、道路障害事故、人身障害事故、物損事故のそれぞれ7種類ずつがある。
 これらの規則を読むと、運転事故とは鉄道会社の過失の度合いには関係なく国土交通省に報告すべきもののようだ。ところが、統計を見る限り、一部の鉄道会社は飛び込み自殺を運転事故として扱わず、報告も行っていない。表2によって評価を下す際には注意が必要だ。なお、運転事故については近々、国土交通省に問い合わせることとしたい。



 こちらもばらつきが顕著だ。最も短いJR四国の56万3892kmと最も長い東京急行電鉄の846万0500kmとの間には実に15倍もの格差が生じている。なお、京王電鉄の0件は非常に優秀な数値であり、尊敬すべきではあるものの、前述のとおり、飛び込み自殺等が計上されていないようなので比較の対象とはしなかった。
 表2から「運転事故1件に対する列車キロ」が100万kmを割り込んでいる鉄道会社を短い順に挙げると、先ほどのJR四国、京阪電気鉄道、阪神電気鉄道、JR九州、西日本鉄道の5社だ。あえてどことは言わないが、毎回似たような顔ぶれが集まっているとお気づきになった方も多いことだろう。
 列車キロと比較して現業部門の職員数や運送費が少ない鉄道会社は、1件の運転事故を起こすまでの列車キロも短い傾向にある。前回のデータとも照らし合わせると、「現業部門の職員1人が受け持つ1日当たりの列車キロ」が30km以上であり、なおかつ「列車キロ1km当たりの運送費」が2000円未満で「運転事故1件に対する列車キロ」が100万km未満でもある鉄道会社の合理化は「行き過ぎ」であると言わざるを得ない。
 前回と今回とで用いた3点の表から、週刊誌の見出しのように「危険な鉄道会社ランキング」のたぐいを作成することは容易だ。しかし、これには意味がない。確率がどうあろうと、運転事故によって引き起こされた悲劇の大きさに変わりはないからだ。
 筆者は、安全性を損ねてまで鉄道事業を成り立たせているものの正体を探るほうが重要だと考える。「行き過ぎ」た合理化を求めているのは鉄道会社だけではないはずだからだ。時間はかかると思われるのだが、調査が進んだ段階で結果を報告していきたい。

2006年6月6日

サイト開設のお知らせ
「鉄道ジャーナリスト 梅原 淳」を開設いたしました。皆様どうぞよろしくお願いいたします。
  • 2006.06.06 Tuesday
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2006年6月6日

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日本最長の貨物列車を追え!

 日本最長の列車というと大阪-札幌間の「トワイライトエクスプレス」の1502.5km(営業キロ)がよく引き合いに出される。だが、それは違う。正解は札幌貨物ターミナル駅と福岡貨物ターミナル駅とを結ぶコンテナ貨物列車(千歳、函館、江差、海峡、津軽、奥羽、羽越、白新、信越、北陸、湖西、東海道、山陽、鹿児島線経由)1往復。その距離は2127.7kmだ。残念ながら愛称名はない。札幌から福岡へと向かうのが3098〜2071列車、その反対が2070〜3099列車である。どちらも大阪府吹田市にある吹田信号場で列車番号が変わってしまう。ここを境に上り列車から下り列車としておかないと不都合が生じるからであり、日本列島を縦断している証拠でもある。
 2本の最長列車のうち、所要時間が長いのは2070〜3099列車だ。福岡貨物ターミナル1時53分発、札幌貨物ターミナル21時20分着で、何と43時間27分も走り続けている。ちなみに、3098〜2071列車の所要時間は37時間47分だ。
 今回の「企画アリ!」ではこの列車の追跡ルポを取り上げたい。通常、貨物列車のルポは機関車の運転台に添乗するのが定番だ。とはいえ、これでは主役であるコンテナの状況がわからない。旅客列車に乗りながら追いかけてみよう。
 2070〜3099列車は途中、北九州貨物ターミナル駅と新潟貨物ターミナル駅とで貨車の連結と切り離しを、広島貨物ターミナル駅、富山貨物駅、秋田貨物駅の各駅でコンテナの積み卸しを行っている。貨車の動向や積まれているコンテナの増減、さらには途中で繰り返される機関車の付け替えなどからこの列車の特徴をつかむ。大げさにいえば日本の物流の一場面を垣間見ることができるといえよう。


 追跡に必要な行程を表のとおりまとめてみた。ご覧のようにハードスケジュールそのもので、趣味で実行するのは難しいだろう。ふと思ったのだが、この追跡ルポは北海道テレビ放送系の人気番組、「水曜どうでしょう」の趣旨に近いのではないだろうか。ミスターこと鈴井貴之といまや大スターの大泉洋とが1本の貨物列車をめぐって珍道中を繰り広げるシーンが目に浮かぶ。ぜひともその様子を観てみたい。

『鉄道統計年報』



 『鉄道統計年報』とはその名のとおり、鉄道に関する統計ばかりを集めた書籍である。毎年1回の発行で項目は「1.運輸」「2.作業量」「3.財務」「4.施設・車両」「5.資材」「6.職員」「7.運転事故」「8.索道」「9.附表」から成り立つ。データは鉄道事業者や軌道経営者(以下鉄道会社)ごとにまとめられ、鉄道について深く知るためには欠かせない1冊である。
 本書のデータはすべて法規に基づいて鉄道会社が国土交通省に報告したものだ。関係するものをざっと挙げると、鉄道事業法第五十五条、鉄道事業等報告規則、鉄道事故等報告規則、鉄道事業会計規則、軌道法施行規則第三十五条、軌道事業の営業報告書及び実績報告書の様式を定める告示、軌道事故等報告規則となる。
 2006(平成18)年6月時点での最新版は平成15年度版だ。この版からは「9.附表」欄に「(24)JR旅客会社運輸成績表(延日キロ、人キロ、平均数」が掲載されるようになり、JR各路線の詳細なデータを知ることができるようになった。特に興味深いのは旅客輸送密度(旅客営業キロ1km当たりの1日平均旅客輸送人員)という名でおなじみの「平均数」だ。全国一はJR東日本山手線(品川-田端間)の98万8377人で、最低は同じくJR東日本岩泉線(茂市-岩泉間)の85人だと判明する。
 余談だが、かつて国鉄一の赤字路線として名を馳せた美幸線(美深-仁宇布間)の旅客輸送密度は82人(1977年度〜1979年度の平均)。美幸線は1985(昭和60)年9月17日にバスに転換された。国鉄亡き後のJRにもこの路線とほぼ同等の閑散路線が存在しているのだ。
 残念ながら、本書に掲載されているデータにはつじつまの合わない部分や誤りが各所に見受けられる。筆者はそのつど、国土交通省や鉄道会社に問い合わせているが、そうした個所の多くはごく単純なミスによって生じたものだった。法規に則って報告や集計が行われているのだから、正確なデータを提供してほしいものだ。
 いままでの例からいうと、平成16年版は2006年7月ごろの発売となる。政府資料等普及調査会のページ(http://www.gioss.or.jp/index.html)からも購入可能なので、この機会にぜひともご一読をお勧めしたい。

『平成15年版 鉄道統計年報』、政府資料等普及調査会、2005年3月。定価:6300円。

統計から見る鉄道会社の人員配置状況

その合理化は「行き過ぎ」か

 鉄道事業者や軌道経営者(以下鉄道会社)に非のある事故である運転事故が発生すると、「行き過ぎた合理化」と非難の矛先が鉄道会社に向けられる。もちろん、運転事故を起こした鉄道会社に弁解の余地はない。とはいえ、合理化自体は決して悪いことではなく、「行き過ぎ」た結果、運転事故を引き起こす要因となって初めて非難されるものだといえる。
 合理化が「行き過ぎ」かどうかを判断するのは困難だ。そこで、統計を用いて実態を把握することとしよう。合理化の代表といえば人員の削減だ。現代の鉄道会社がどれだけの人数で列車を走らせているのかを調べてみた。
 『平成15年度 鉄道統計年報』(国土交通省鉄道局監修、政府資料等普及調査会、2005年3月)にはさまざまな統計が載っている。今回は585ページ〜593ページの「(18)職員数及び年間給与額表」と66ページ〜79ページの「(4)営業キロ及び走行キロ表(2)」とを参照することとした。
 サンプルに選んだのはJR旅客会社6社と大手民鉄16社の合わせて22社。各社で活躍する現業部門の職員数と、1日に運転されるすべての列車が走行する距離とを比べてみた。大ざっぱな計算ではあるものの、もしも列車の走行距離が突出して多ければ、他社に比べて人員削減を強く推進しているといえるだろう。
 なお、ここでいう現業部門とは運輸、工務、電気、車両、建設の各分野から構成され、運輸分野はさらに駅職員、運転士、車掌、その他と細分されている。鉄道会社にはこのほかに役員や本社部門(総務、運輸、工務、電気、車両、建設)の職員も在籍するが、列車の運転に直接は関係ないと考えて省いた。

1位は阪急、その理由とは……



 まずは表をご覧いただきたい。1日に運転される列車の走行距離の総数は各社とも膨大だ。しかし、この数値を現業部門の職員の総数で除すると案外イメージしやすい距離となることがわかる。
 「現業部門の職員1人が受け持つ1日当たりの列車キロ」の平均値は19.7km。この値よりも多い鉄道会社、それも30km以上の阪急電鉄、近畿日本鉄道、西日本鉄道、名古屋鉄道、JR九州の5社は人員の削減が進んでいると考えられる。
 1位となった阪急電鉄のケースを見てみよう。その距離は38.7kmあり、京都線の梅田-洛西口(らくさいぐち)間と同じだ。
 日ごろ阪急電鉄をご利用になっている方ならお気づきかと思うが、他社と比べて極端に現業部門の職員が少ないとは感じられない。同社の数値が突出している理由は人件費削減のために現業部門の多くを分社化したからだ。その分社とは株式会社阪急レールウェイサービス。2001(平成13)年6月、阪急電鉄が100%出資して設立された。
 JRも民鉄でも保線作業などの大多数は外注化されている。しかし、阪急電鉄の場合は阪急レールウェイサービスの社員が駅職員や車掌も務めている点が特徴だ。したがって、社員の数も1469人(2005年4月1日現在)と多く、仮に全員が現業部門の職員だとすると、阪急電鉄の数値は20.3kmとほぼ平均的な値にまで下がる。
 いまのところ阪急電鉄の列車の運転はすべて同社の社員が担当しているが、将来は阪急レールウェイサービスの社員のなかから運転士に登用される可能性もあるのだという。ちなみに、電車の運転には甲種電気車運転免許が必要だ。動力車操縦者運転免許に関する省令第五条によると、運転免許を受けるには所属事業者名などを記載した運転免許申請書を提出しなくてはならない。「事業者」とは鉄道事業法に基づく鉄道事業者だと考えられる。阪急電鉄は第一種鉄道事業者だが、阪急レールウェイサービスはそうではない。したがって、運転士となるためには同社から阪急電鉄に出向するなどの措置をとるのだろう。
 統計上は現業部門の職員が少なく見えても、列車を走らせるために必要な職員数は外注化によって確保されていたことが判明した。30kmを超える鉄道会社として先に挙げた残る4社も似たような施策を採用しているのだろう。こうなると職員数の適正値を探る必要があり、他の統計も参照しなければならない。次回はその結果を報告したい。

単調な毎日こそが幸福な証拠

 鉄道ジャーナリストは普段何をしているのか――。自分自身について申し上げれば、鉄道に関する記事の執筆作業に最も時間を費やしている。発表する場はいまのところ書籍と雑誌の2分野だ。比率は書籍が6で雑誌が4といったところか。
 寄稿している雑誌の分野は鉄道専門誌が中心だが、それだけではない。旅行やビジネスといった分野、ときには児童向けの雑誌にも記事が掲載される。
 執筆時間は朝9時30分ごろから夜7時ごろまでだ。この間、昼食もしっかりとるし、午後3時ごろには休憩する。週休2日としたいものの、実際には1日程度しか休まない。仕事をしないと不安になるため、土曜、休日とも平日の半分くらいの時間は机の前に向かう。
 よく質問されるのは、執筆以外に何をしているのかという点だ。年中、全国の鉄道に乗って旅をしていると思われがちだが、実際にはそうではない。1カ月のうち多くても1週間以内、どこにも乗りに行かない月も結構ある。
 鉄道に乗る代わりに多くの時間を費やしているのは調査や取材活動だ。特に資料集めや文献による調査は念入りに行うよう努めている。行く先は図書館。筆者は東京都内在住なので、国立国会図書館(東京都千代田区永田町1-10-1)、国土交通省図書館(同千代田区霞ヶ関2-1-2 合同庁舎第2号館14階)、東京都立中央図書館(同港区南麻布5-7-13)の3カ所をよく利用している。その回数は週に1、2回といったところだ。
 取材先は鉄道会社各社や監督官庁である国土交通省、自治体(公営鉄道を含む)、さらにはメーカーとなる。広報部門に電話で問い合わせることが多い。組織の後ろ盾をもたない個人とはいえ、どこも親切に教えてくれる。資料はもちろん、なかには参考までにとノベルティーグッズ類を送ってくれるところもあるほどだ。もちろん、そうした先には礼状を出すようにしている。
 率直に申し上げて、鉄道ジャーナリストの日常とは単調な毎日の連続だ。しかし、それは運転事故やトラブルがない状態を意味する。鉄道ジャーナリストと名乗るようになってからというもの、筆者は同じ作業の繰り返しに不満を抱いたことは一度もない。むしろ感謝している。願わくばこれから先もそうであってほしい。
 今回は表面的なことばかりを記した。次回以降は鉄道ジャーナリストである筆者が何に関心を抱いているのかなどについて触れていきたい。


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