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緊急 JR西日本の山崎正夫社長の起訴と辞任について

 2009年7月8日、神戸地方検察庁は2005年4月25日に発生した福知山線塚口駅〜尼崎駅間列車脱線事故(以下、福知山線列車脱線事故)に関する業務上過失致死傷罪でJR西日本の山崎正夫社長を在宅のまま起訴した。これを受け、同日夜山崎社長は会見を開き、辞任を表明している。
 山崎社長の起訴状は次のような内容だ。福知山線尼崎-塚口間の曲線は1996年12月に半径600mから304mへと急カーブに付け替えられた。当時、山崎社長は安全対策の最高責任者である鉄道本部長の地位にあり、急曲線の危険性を予知できたにもかかわらず、該当の区間に制限速度を超えて進入する列車を停止させる保安装置を導入せず、福知山線列車脱線事故を起こし、多数の乗客を死傷させたというものである。
 既報のとおり、保安装置とはATS(自動列車停止装置)であり、正確に言うと、該当の区間に設置しなかったのはATS-SW形がもつ車上速度照査機能に用いるSC-0形あるいはSC-2形と呼ばれる速度照査地上子を指す。
 筆者は今回の山崎社長の起訴と辞任について山崎社長やJR西日本に対してはいかなる感想ももっていない。実は2008年9月に兵庫県警察が山崎社長をはじめとするJR西日本の関係者を書類送検した段階で、他の経営幹部や死亡した高見隆二郎運転士は別として、鉄道本部長を務めていた山崎社長の起訴は間違いないという情報を筆者は得ていた。そして、起訴された場合、山崎社長の辞任は避けられないとJR西日本の社内でもうわさされており、今回の起訴と辞任は予想どおりに事が運んだだけだろう。
 山崎社長の起訴は極めて異例と言われるが、神戸地方検察庁は福知山線列車脱線事故の負傷者や遺族の方々の意を汲んで捜査に当たったのであり、むしろ当然の結末だと言える。航空・鉄道事故調査委員会(現在の運輸安全委員会)が公表した「鉄道事故調査報告書西日本旅客鉄道株式会社福知山線塚口駅〜尼崎駅間列車脱線事故」では速度照査地上子の設置について、必ずしもJR西日本に責任はないとも受け取ることのできる記述があり、起訴は意外であるとの向きも多い。同報告書はJR西日本を監督する立場にあった運輸省(現在の国土交通省)の責任を回避させるかのように解釈可能な記述があり、JR西日本を追及することは運輸省への批判にもつながる。このため、あいまいな記述となったのではないだろうか。
 とはいうものの、山崎社長の起訴は負傷者や遺族の方々が感情にまかせて行った結果だという批判は間違いだ。該当の区間であったかはわからないが、このような事故が発生することは筆者も予見でき、そして防ぐことができなかった。鉄道事業、軌道経営に直接的、間接的に関わっている人たち、筆者のように鉄道に近い位置で業務を行っている者、鉄道に関して一定の知識のある人々ならば、列車や車両が急カーブを制限速度を大幅に上回る速度で通過すれば脱線、転覆することは常識として理解できる。
 なぜ、このような事故を防ぐことができなかったのかに関する検証は必要だが、いまはまだ当時の責任者が責任を取るべき段階だ。しかし、山崎社長の裁判を進めていくうちにいま挙げた問題が明らかにされるかもしれない。
 恐らく、山崎社長の起訴と辞任とは2009年の鉄道ニュースの第一位となるだろう。ここで突きつけられているのはJR西日本の経営者責任だけではない。車両の取り扱いを間違えれば、わずか1m動かしただけでも大惨事となってしまう。今回、神戸地方検察庁や世間が鉄道について突きつけたのは、鉄道とは本来危険なものであり、それを常に忘れてはならないというものではないだろうか。
 筆者は福知山線列車脱線事故の発生を予見できず、業務上、発言に影響力をもっていたにもかかわらず、有効な手だてを取ることができなかった。こうした重大な落ち度に関する責任からは一生逃れることはできない。今回の山崎社長の起訴と辞任を受けて筆者が考えたこととは、筆者自身の責任なのである。


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