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ワシントンの地下鉄での列車衝突事故について

 2009年6月23日早朝(米国時間6月22日17時)、米国の首都ワシントンの地下鉄レッドライン、タコマ駅とフォート・トッテン駅との間で列車の列車衝突事故が発生した。地下鉄を運行するワシントン首都圏交通公団(Washington Metropolitan Area Transit Authority)の発表によると、日本時間の6月24日午前0時現在で運転士1人を含む6人の方々が命を落とし、多数の負傷者が生じているという。
 今回の列車衝突事故で亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、心身に深い傷を負われた方々が一日も早くご回復されることをお祈りします。
 さて、レッドラインでの列車衝突事故は、何らかの原因で脱線して本線上に立ち往生していた列車に後続の列車が追突したものと考えられる。ワシントン首都圏交通公団によれば、当時は列車を自動モード、恐らくATO(自動列車運転装置)あるいはATC(自動列車制御装置)と考えられる信号保安装置を用いて運転していたという。にもかかわらず、後続の列車の先頭車両が前方の列車の最後部の車両の上に乗り上げて大破してしたという状況を見ると、後続の列車は少なくとも50km/h程度の速度で衝突したものと考えられる。
 列車衝突事故の原因はいまのところ発表されていない。しかし、ATOあるいはATCの故障とは考えにくいし、前方の車両が脱線して停止していたとしても、写真で見る限り、軌道回路で検知できなかったという事態もなさそうだ。となると、後続の列車の運転士は許容停止の信号機(「停止信号現示の場合でも,定められた条件によって列車がその信号機を超えて進行できる信号機」JISE3013の番号2041)であることを確認したうえでATOまたはATCを解除して運転していた疑いが濃厚となる。だが、死亡したために原因の究明には時間を要するだろう。
 今回の列車衝突事故で筆者が思い浮かべたのは1980年10月17日と1988年12月5日に中央線の東中野駅構内で発生した総武・中央線緩行電車の追突事故である。ワシントンからの写真を見る限り、列車衝突事故現場は下り勾配でなおかつ曲線区間であり、東中野駅構内同様に見通しが悪く、なおかつ前方の列車を発見して非常ブレーキを作動させても間に合わない可能性の高い場所のようだ。また、東中野駅構内での列車衝突事故はいずれもATS(自動列車停止装置)を解除して運転を続けた結果起きており、今回の事故ももしかしたら同様の原因で発生したものと考えられる。
 筆者は6月24日早朝に放映予定の「めざましテレビ」(フジテレビ系)で、今回の事故は信号保安装置の盲点を突いて起きたものではないかと指摘し、日本での事故の例を挙げて説明した。日本でも今回のような列車衝突事故が発生する可能性はゼロとは言えない。いたずらに危険を煽ることは慎みたいが、鉄道事業者、軌道経営者は今回の列車衝突事故を教訓に再度、安全の確認を徹底する必要があるだろう。


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