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副都心線の列車ダイヤは強気の設定なのか

山手線の混雑緩和を目指して建設された副都心線

 2008(平成20)年6月14日、東京地下鉄13号線副都心線(以下副都心線)池袋-渋谷間8.9kmが開業を果たす。東京の都心部では久々の新線開業なので、沿線は開業ブームにわいている。
 副都心線は山手線の混雑緩和を目的として計画された。いまから23年前の1985(昭和60)年度に山手線で最も混雑の激しかった区間は代々木駅から新宿駅までの間。最混雑1時間の混雑率は263%(輸送力3万3600人、通過人員8万7310人)、終日の混雑率は138%(輸送力39万7600人、通過人員54万9550人)と、いまから見ると考えられないような数値が並ぶ。筆者は1981(昭和56)年4月から1984(昭和59)年3月までの3年間、高校への通学に山手線渋谷-池袋間を往復しており、毎朝うんざりしながら山手線の外回りの電車に乗っていた。当時、内回りの電車の混雑はさらにひどく、池袋駅ではホームへの入場規制も行われていたほどである。
 2004(平成16)年度は新大久保駅から新宿駅までの間で調査が行われ、最混雑1時間の混雑率は180%(輸送力3万9072人、通過人員7万220人)に、終日の混雑率は82%(輸送力53万728人、通過人員43万7850人)にまで緩和されている。埼京線や湘南新宿ラインといった新しい運転系統の整備の賜物であろう。

池袋駅での列車の本数は有楽町線新木場駅方面よりも多い

 副都心線について筆者が驚いたのはその強気な列車ダイヤ設定である。平日の時刻表を見ると、池袋駅から渋谷駅方面への列車が220本、渋谷駅から池袋駅方面への列車が221本、それぞれ設定されているのだ。何しろ、8号線有楽町線(以下有楽町線)の池袋駅から新木場駅方面の列車の本数が平日で215本なのだから、いかに東京地下鉄が副都心線の利用客が多いと考えているかがおわかりいただけることだろう。
 東京地下鉄がここまで強気な需要をはじき出した背景を探ってみたい。実はいままでのデータも国土交通省総合政策局監修、『都市交通年報』、運輸政策研究機構から引用していた。ここからは2008(平成20)年3月に発行された平成19年版を用いて分析させていただく。
 副都心線にとって最もお得意さんとなるのは有楽町線和光市駅方面と山手線品川駅方面とを乗り換えている利用客だろう。副都心線では和光市-渋谷間の運転となる列車が多い。池袋駅での乗り換えが解消され、便利になるからだ。
 2005(平成17)年度に池袋駅で有楽町線とJR東日本の路線とを乗り継いだ利用客の数は1日当たり1万6523人だ。この数値は定期乗車券の利用客だけで、普通乗車券の利用客数は含まれていない。というのも、流動量の調査では連絡乗車券の利用状況に基づいて算出するのだが、東京地下鉄とJR東日本との連絡乗車券はあまり一般的ではないからだ。
 池袋駅で有楽町線を乗り降りする人のうち、和光市駅方面から来たあるいは向かう人の数は1日当たり6万9931人。内訳は普通乗車券が3万9423人、定期乗車券が3万508人だ。一般乗車券と定期乗車券の割合から考えると、有楽町線とJR東日本とを乗り継いだ人の数は2万1351人と考えられる。
 問題はJR東日本の路線に乗り換えた人のうち、何人が山手線品川駅方面から来たかあるいは向かうかだ。山手線の池袋駅で乗り降りした人の動向を見ると、品川駅方面に関係する人の数は1日当たり45万3864人、いっぽう田端駅方面に関係する人の数は23万7259人となっている。比率としては1.9対1だ。したがって、先ほどの2万1351人のうち、1万4021人が有楽町線和光市駅方面と山手線品川駅方面とを乗り換える利用客の数と考えられる。
 とはいうものの、1日当たり1万4021人の利用客しか見込めないのでは輸送力があり余ってしまう。副都心線池袋駅から隣の雑司ヶ谷駅までを基準に考えると、220本の列車のうち8両編成(定員1136人)で運転される列車は125本、10両編成(定員1424人)は95本なので、終日の輸送力は27万7280人となるからだ。
 そこで、東京地下鉄は東武鉄道東上本線(以下東上線)と西武鉄道池袋線と山手線品川駅方面とを乗り継ぐ利用客に着目した。ご存じのとおり、副都心線はこれら両路線とも相互直通運転を実施しているから、開業によって山手線からの移行が見込める。
 東上線の場合、このようなケースに該当する利用客の数は1日当たり9万4705人。池袋線は1日当たり6万3853人となる。これら両線の利用客がすべて副都心線に移行したとしてもまだ15万8558人。実際には多くても半分程度だろうから7万9279人。これに先ほどの1万4021人を足して9万3300人となり、終日の輸送力27万7280人に対する終日の混雑率は34%となる。

終日の混雑率は何%であればよいのか

 そもそも、終日の混雑率(=利用率)は何%であれば経営上及第点が付けられるのだろうか。東京地下鉄の場合、この数値が最も高いのは2路線あり、それぞれ78%を記録している。3号線銀座線赤坂見附駅から溜池山王駅までが輸送力22万1312人に対し、通過人員は17万2904人、5号線東西線木場駅から門前仲町駅までが輸送力38万7328人に対し、通過人員は30万1543人だ。国土交通省が調査した区間で最も低いのは同じく5号線東西線の高田馬場駅から早稲田駅までの36%。輸送力37万8784人に対し、通過人員は13万7388人である。
 さすがに34%という数値では心もとない。東京地下鉄は山手線から移行する利用客の数も計算に入れているはずだ。比較する区間が異なっているものの、冒頭で挙げた新大久保駅から新宿駅までの輸送人員43万7850人のうち、10%の人たちが副都心線を利用するようになれば、9万3300人に4万3785人を加えて13万7085人。終日の混雑率は49%にはね上がる。
 49%という数値はそう悪くはない。欲を言えばあと10ポイントほど上乗せしたい。ならば、輸送力をあと4万4933人差し引いて23万2347人とすれば達成できる。8両編成の列車ならば40本、10両編成ならば32本減らせばよい。
 しかし、これでは朝夕のラッシュ時に大混雑となってしまうのだろう。いま挙げた5号線東西線の高田馬場駅から早稲田駅まででも、最混雑1時間の混雑率は131%(輸送力は3万4176人、輸送人員は4万4933人)とそれなりの混みようだ。副都心線の最混雑1時間の混雑率がいかほどとなるのかは不明だが、国土交通省の指導もあるので、東京地下鉄としては恐らく150%程度に抑えておきたいはずである。したがって、27万7280人という輸送力は東京地下鉄が熟慮の末に導き出した数値であり、ことによると、これでも弱気な列車ダイヤとも言えるだろう。
 本稿が開業ブームを祝っているのか、それとも水を差しているのかどうかはわからない。いずれにしろ、副都心線が建設時の目的を果たし、なおかつ安全に運行されることを祈る。


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