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統計から見る鉄道会社の人員配置状況

その合理化は「行き過ぎ」か

 鉄道事業者や軌道経営者(以下鉄道会社)に非のある事故である運転事故が発生すると、「行き過ぎた合理化」と非難の矛先が鉄道会社に向けられる。もちろん、運転事故を起こした鉄道会社に弁解の余地はない。とはいえ、合理化自体は決して悪いことではなく、「行き過ぎ」た結果、運転事故を引き起こす要因となって初めて非難されるものだといえる。
 合理化が「行き過ぎ」かどうかを判断するのは困難だ。そこで、統計を用いて実態を把握することとしよう。合理化の代表といえば人員の削減だ。現代の鉄道会社がどれだけの人数で列車を走らせているのかを調べてみた。
 『平成15年度 鉄道統計年報』(国土交通省鉄道局監修、政府資料等普及調査会、2005年3月)にはさまざまな統計が載っている。今回は585ページ〜593ページの「(18)職員数及び年間給与額表」と66ページ〜79ページの「(4)営業キロ及び走行キロ表(2)」とを参照することとした。
 サンプルに選んだのはJR旅客会社6社と大手民鉄16社の合わせて22社。各社で活躍する現業部門の職員数と、1日に運転されるすべての列車が走行する距離とを比べてみた。大ざっぱな計算ではあるものの、もしも列車の走行距離が突出して多ければ、他社に比べて人員削減を強く推進しているといえるだろう。
 なお、ここでいう現業部門とは運輸、工務、電気、車両、建設の各分野から構成され、運輸分野はさらに駅職員、運転士、車掌、その他と細分されている。鉄道会社にはこのほかに役員や本社部門(総務、運輸、工務、電気、車両、建設)の職員も在籍するが、列車の運転に直接は関係ないと考えて省いた。

1位は阪急、その理由とは……



 まずは表をご覧いただきたい。1日に運転される列車の走行距離の総数は各社とも膨大だ。しかし、この数値を現業部門の職員の総数で除すると案外イメージしやすい距離となることがわかる。
 「現業部門の職員1人が受け持つ1日当たりの列車キロ」の平均値は19.7km。この値よりも多い鉄道会社、それも30km以上の阪急電鉄、近畿日本鉄道、西日本鉄道、名古屋鉄道、JR九州の5社は人員の削減が進んでいると考えられる。
 1位となった阪急電鉄のケースを見てみよう。その距離は38.7kmあり、京都線の梅田-洛西口(らくさいぐち)間と同じだ。
 日ごろ阪急電鉄をご利用になっている方ならお気づきかと思うが、他社と比べて極端に現業部門の職員が少ないとは感じられない。同社の数値が突出している理由は人件費削減のために現業部門の多くを分社化したからだ。その分社とは株式会社阪急レールウェイサービス。2001(平成13)年6月、阪急電鉄が100%出資して設立された。
 JRも民鉄でも保線作業などの大多数は外注化されている。しかし、阪急電鉄の場合は阪急レールウェイサービスの社員が駅職員や車掌も務めている点が特徴だ。したがって、社員の数も1469人(2005年4月1日現在)と多く、仮に全員が現業部門の職員だとすると、阪急電鉄の数値は20.3kmとほぼ平均的な値にまで下がる。
 いまのところ阪急電鉄の列車の運転はすべて同社の社員が担当しているが、将来は阪急レールウェイサービスの社員のなかから運転士に登用される可能性もあるのだという。ちなみに、電車の運転には甲種電気車運転免許が必要だ。動力車操縦者運転免許に関する省令第五条によると、運転免許を受けるには所属事業者名などを記載した運転免許申請書を提出しなくてはならない。「事業者」とは鉄道事業法に基づく鉄道事業者だと考えられる。阪急電鉄は第一種鉄道事業者だが、阪急レールウェイサービスはそうではない。したがって、運転士となるためには同社から阪急電鉄に出向するなどの措置をとるのだろう。
 統計上は現業部門の職員が少なく見えても、列車を走らせるために必要な職員数は外注化によって確保されていたことが判明した。30kmを超える鉄道会社として先に挙げた残る4社も似たような施策を採用しているのだろう。こうなると職員数の適正値を探る必要があり、他の統計も参照しなければならない。次回はその結果を報告したい。

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