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N700系から見るJR東海とJR西日本との関係

大々的なPR活動が展開されているN700系

 JR東海とJR西日本は2007(平成19)年5月23日(水)、N700系のマスコミ向け試乗会を開催した。筆者はネコ・パブリッシング「Rail Magazine」編集部から派遣されて東京-博多間を乗車し、記事は同誌2007年6月21日発売予定の8月号に掲載の予定だ。この試乗会の模様は名取紀之「Rail Magazine」編集長のブログ、「編集長敬白」の2007年5月23日付けのページ(http://www.hobidas.com/blog/rail/natori/archives/2007/05/n700_2.html)でも紹介されているので、そちらもご参照いただきたい。
 来る7月1日(日)から営業運転を開始するN700系に対し、JR東海は近年になく大がかりなPR活動を展開している。筆者は東京都内に在住しているが、ここのところN700系のテレビCMに1日1回は必ず出合う。エアロダブルウイングと称される先頭形状と「新!」というロゴとの組み合わせは広く認識されたに違いない。
 試乗会前に筆者がJR東海の関係者に聞いたところでは、金額は言えないものの、相当な予算を割いているのだという。「予算に余裕ができまして……」と教えてくださった方もいた。

東海道新幹線と山陽新幹線との相互乗り入れには利害の対立は避けられない

 冒頭で紹介したように、試乗会の模様は「Rail Magazine」8月号の記事をご期待いただければ幸いである。ここではN700系から見たJR東海とJR西日本との関係について述べてみたい。
 結論から先に言ってしまおう。JR東海とJR西日本の両社は東海道新幹線と山陽新幹線との相互乗り入れをめぐって利害の対立が生じている。JRの当事者はもちろん、業界関係者、熱心なファンの方々でもうすうすは感じ取れるはずだろう。
 誤解なきようにお願いしたいのは、両社とも生理的にお互いのことを嫌っているのではない。東海道、山陽という仕様も異なれば、輸送実績にも大きな差の付いている新幹線を2社が分担し、あたかも1本の路線であるかのように運転するのだから衝突が生じて当然なのである。
 JR同士で最も「仲が悪い」のはJR東日本とJR東海であることは間違いない。両社の利害が対立しているうえ、筆者の目からはお互いを生理的に受け付けていないようにも受け取れる。どちらの会社の担当者だったかは秘すが、自社の名が載ったある書類に「仲の悪い」他社の名があっただけで怒り出した人がいた。また、両社の境界駅である東海道線熱海駅で実施される乗務員の交代の模様を観察すると、両社の運転士が引き継ぎの際に目すら合わせようとしないことに気づくはずだ。

500系をめぐる対立

 東海と西日本というJR2社の対立はあくまでも鉄道事業者としての正当な主張に基づくものである。だが、JR西日本の500系という新幹線電車についての対立にはやや感情的なもつれも含まれている。
 500系とは300km/hで走行可能な車両で、戦闘機のような先頭形状と断面をもつ。他の新幹線電車には見られないスタイルで人気も上々だ。
 ところが、JR東海は500系を認めたくないらしい。同社の担当者に東海道新幹線には何という名の車両が走っているのかと聞くと、ほぼ間違いなく皆300系と700系だと答える。JR西日本の500系が乗り入れているのを承知のうえで言わないのだ。
 JR東海にとって500系は目の上のたんこぶでしかない。筆者が聞いたところでは理由は主に3つある。定員が1323人のJR東海の300系や700系よりも多い1324人であるうえ、号車ごとの定員にも差があるために車両を差し替えた際にはトラブルの種となる点、16両編成中、モーターの付いていない車両が4両(700系)または6両(300系)連結されているのに対し、500系はすべての車両にモーターが付いていて電力消費量(数値は不明)が多いという点、さらには、1号車と16号車には乗務員室のすぐ隣に旅客用の戸がないという点だ。これらは趣味趣向の問題では済まない。東海道新幹線で鉄道事業を展開していくうえで大きな障害となりうるからだ。
 率直に言って、筆者に500系の不満を述べるくらいならば、JR西日本と交渉してさっさと追い出せばよいのにと思う。実際に何度もそう試みたらしい。だが、なかなか実現できなかった。代わりとなる車両がないとJR西日本が反発したからだろう。

N700系の登場で対立は解消に向かうのか

 今年、ついに500系の代わりとなるN700系が登場する。JR西日本もN700系を投入すると発表したからだ。したがって、ゆくゆくは東海道新幹線から500系は姿を消すこととなり、JR東海が抱いていた長年の悩みは解消されるに違いない。
 人気者の500系についても公平な記述を心がけるべきではあるものの、実際にN700系と乗り比べてみるとやはりN700系のほうが優れている。登場時期が違うので単純に比較はできないが、それを承知のうえで述べさせていただくと、両者は設計思想からして異なっているようだ。スピードアップを主眼とした500系に対し、N700系は快適性を売り物としているという具合にである。
 500系が東海道新幹線で営業を開始したのは1997(平成9)年11月29日のこと。間もなく10年が経過しようとしているいま、ようやく両者の対立は丸く収まろうとしているのだ。


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