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TGVの速度記録更新について(速報)

世界最高記録が更新される

 2007(平成19)年4月3日(火)13時14分(現地時間)、フランス国有鉄道の高速鉄道TGVのV150形がパリ-ストラスブール間の新路線で試験走行を実施。191km地点で574.8km/hを記録した。この記録は1990(平成2)年5月18日(金)にTGVがマークした515.3km/hを59.5km/h上回るものである。
 車輪を取り付けた車両がレール上を走行する速度としては世界最高記録を達成したときの模様は動画で視聴することが可能だ。http://www.record2007.comからフランス語または英語を選んで入ると、動画を配信するページがある。筆者がくどくどと説明するよりも、視聴していただければあらましがご理解いただけることだろう。

安定した走行状況と集電状況

 試験走行の模様を観ての感想は、「実に安定して走っている」の一言に尽きる。台車に取り付けた車載カメラからの映像からは、平行リンク式軸箱支持(「軸箱を前後から段違いに,ゴムブシュが付いた2本の平行リンクで台車枠に結合して,輪軸を平行に保ちながら上下方向に動くことができるようにした軸箱を支持する構造。」JISE4001の番号23021より)、V150形の製造メーカー名からアルストム(Alsthom)式と呼ばれる軸箱支持装置を備えた台車の走行状況を観ることができるのだが、全くと言ってよいほど蛇行動(「輪軸の横運動及び車体のヨーイングの連成した正弦波振動。」JISE4001の番号13084より)を起こしていない。時折、垂直方向振動が確認される程度だ。また、車両の走行によってバラストが巻き上げられてもいない。東海道新幹線ではポリモリタル系の乳剤を用いてバラストを固めているが、TGVも同じような工夫を施しているものと思われる。いずれせよ、厚さ350mmで敷き詰められたバラストを用いた軌道の整備状況はほぼ完璧なのだろう。
 車内の様子を見ると半径8000〜10000m程度の曲線を500km/h以上の速度で走行しているにもかかわらず、立っている人がよろめいたり、転ぶようなこともない。TGVやアルストム社の公式サイトをざっと探しても、V150形が振子車両であるとか、車体傾斜装置付きだとは記されていなかった。これは適当な予測値だが、実カント量を300mm(日本の新幹線の最大値は200mm)とし、カント不足量を150mm許容するとして、日本の国鉄、JR各社が用いている許容速度の数式、最高速度=√曲線半径(m)×(実カント量(mm)+カント不足量(mm))/11.8に当てはめると、半径8000mの曲線の場合、552.3km/hまでは「のぞみ」や「はやて」と同じ乗り心地で乗車できる。
 パンタグラフの集電状況も良好なように見えた。映像からは離線を確認することはできず、エアセクション(「電車線の隣接区間の端末をしかるべき長さでオーバーラップさせて形成された区分点。パンタグラフは両電車線下を短絡走行でき,絶縁は二つの電車線設備間の適切な間げき(隙)のエアギャップによって確保される。」JISE2001の番号5213より)の通過状況もスムーズだ。
 架線は恐らく高張力シンプルカテナリだと思われるのだが、これだけの速度で車両が通過しているにもかかわらず、ほとんど振動が発生していない。トロリ線波動伝播速度を向上させるため、トロリ線の張力を35kN程度(日本の新幹線の最大値は約25kN)に高めたようだ。電柱や支持物が恐ろしく頑丈そうに見えるので、ちょう架線を合わせた総張力は70kN程度(同約59kN)はあるのかもしれない。
 いま挙げたこれらの数値は筆者の推測によるものだ。フランス国有鉄道またはアルストム社に直接問い合わせてみたい。
 蛇足だが、フランス国有鉄道は常日ごろ、大口をたたくというか、挑発的な物言いのため、日本ではどことなく敵役を演じている。しかし、今回の走行試験の状況を見ると、周到な準備作業を行ってきたようだし、見た目の派手さに反して地味な研究作業を繰り返してきたようだ。フランス国有鉄道は素直に努力を重ねてきたと言えばよいのにと思うのだが、一体いかなる事情でそうしないのかについては不明だ。とはいえ、だからこそ鉄道の進歩に寄与していることも間違いはない。


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