HOME > 記事のINDEX
/

営業係数から見る鉄道

黒字と赤字を見る指標、営業係数

 日本国有鉄道(以下国鉄)が存在していたころ、毎年営業係数が発表されていた。100円の収入を得るのにいくら経費がかかるのかという数値である。100円を下回れば黒字、上回れば赤字だ。1978(昭和53)年度の国鉄の営業係数は旅客輸送部門が164円、貨物輸送部門が312円(旅客輸送部門との共通経費を差し引くと174円)とどちらも赤字だった。
 現代の日本では鉄道の営業係数はいくらとなっているのだろうか。『平成16年度 鉄道統計年報』(国土交通省鉄道局監修、政府資料等普及調査会、2006年3月)の120ページから199ページまでの「(5)凝患案散髪超搬傘廖廚鳳超鳩舷瑤2種類掲載されている。項目を見ると「償却前」「償却後」で、単位は%だ。「償却」とは営業費の合計から諸税と減価償却費を差し引き、厚生福利施設の収入を加えることだ。今回は「償却後」の営業係数を紹介して考えてみよう。なお、単位は円としたほうがわかりやすいので、置き換えている。
 2004(平成16)年度の全国すべての鉄道、軌道の営業係数は84.3円だった。100円の収入に対し、15.7円の利益を生み出したことになる。国土交通省が分類した鉄道と軌道の形態別の営業係数は大都市高速鉄道が83.4円(うち地下鉄は87.5円)、路面電車は113.3円、地方旅客鉄道は106.0円、観光鉄道は116.4円、貨物鉄道は101.9円、JR旅客会社は83.4円、JR貨物は97.9円である。
 大都市高速鉄道とJR旅客会社の数値が同じというのは偶然とはいえ面白い。単純に比較することはできないが、29年前の数値と比べると80.6円も改善されたことになる。

営業係数ベスト10は

 気になるのは各社別のランキングだろう。営業係数ベスト10とワースト10を表にまとめてみた。


 ベスト10には意外な顔ぶれが並んだ。特に1位から3位までの鉄道会社をご存じのない方も多いに違いない。実はこれらは線路だけをもち、実際の列車の運行は他社に任せている第三種鉄道事業者だ。1位の和歌山県は和歌山港線県社分界点-和歌山港間2.0kmを所有し、列車の運行は南海電気鉄道に委託している。同様に2位の成田空港高速鉄道は成田空港高速鉄道線としてJR成田線分岐点-成田空港間8.7kmと京成本線分岐点-成田空港間2.1kmの線路をもつ。言うまでもなく、実際の列車の運行はJR東日本と京成電鉄が担当する。3位の京都高速鉄道は東西線御陵(みささぎ)-三条京阪間3.3kmの所有者で、列車を運行しているのは京都市だ。
 線路をもち、列車の運行も行う鉄道事業者を第一種鉄道事業者という。一般的な鉄道会社は皆これに含まれる。第一種鉄道事業者中、最もよい営業係数を上げたのはJRでも大手民鉄各社でもなく、北海道は釧路市の春採(はるとり)と知人(しりと)との間、4.0kmを結ぶ臨港線をもつ太平洋石炭販売輸送だ。
 同社は貨物輸送だけを行っており、旅客は乗ることはできない。社名からもおわかりのとおり、貨物の中身は石炭で、2004年度の数値を見ると、年間70万7460t(2004年度)を輸送している。収入(営業収益)は1億7042万6000円に対し、経費(営業費)は1億837万2000円だったため、このような数値をたたき出したのだ。
 以下の顔ぶれはご覧のとおり。5位の能勢電鉄には鋼索鉄道(ケーブルカー)部門があり、こちらの営業係数は214.1円、同様に9位の東京急行電鉄は軌道部門(世田谷線)もあり、営業係数は133.1円、10位の富山地方鉄道は鉄道部門(本線、立山線、不二越線、上滝線)もあり、営業係数は109.1円となっている。
 8位の筑波観光鉄道は筑波山鋼索鉄道線宮脇-筑波山頂間1.6kmのケーブルカーをもつ。営業係数があまり良好ではない観光鉄道中、全国1位の成績を収めている。
 ランキングに登場しないものの、気になる鉄道事業者の数値も紹介しておこう。JR旅客会社のトップはJR東海で71.3円だ。以下、84.4円のJR東日本、88.1円のJR西日本までが黒字。JR九州は102.9円、JR四国は125.5円、JR北海道は133.8円である。
 地方旅客鉄道でなおかつ第一種鉄道事業者中、最も成績のよいのは水間鉄道の78.2円だ。次いで78.3円の北越急行が肉薄する。
 地下鉄(第一種鉄道事業者)のなかで最もよいのは東京地下鉄の79.7円。大阪市が80.5円で続く。

営業係数ワースト10は

 続いては2004年度のワースト10だ。このうち、2社はすでに廃止されており、営業係数の悪さがそのまま反映されている。
 10社を分類すると、地方旅客鉄道は阿佐海岸鉄道、芝山鉄道、三木鉄道、紀州鉄道、愛知高速交通、神岡鉄道、北海道ちほく高原鉄道の7社、神戸市都市整備公社と伊豆箱根鉄道(駒ケ岳線)はどちらも鋼索鉄道で観光鉄道だ。形態別での営業係数も悪く、地方旅客鉄道と観光鉄道の経営がとても苦しいことがおわかりいただけることだろう。
 大都市高速鉄道中、ただ一つランクに入っている名古屋臨海高速鉄道は西名古屋港線、通称あおなみ線名古屋-金城ふ頭間15.2kmを運行する第一種鉄道事業者だ。2004(平成16)年10月6日と開業したばかりだったため、7億1514万8000円の収入に対して減価償却費が11億6384万2000円もかかってしまい、営業費を23億5556万7000円と悪化させてしまったことが原因だ。同社の場合、償却前の営業係数は166.6円である。この数値もよくはないが、次第に好転していくのだろう。


search this site.