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福知山線脱線事故の報告書案を読んで1

 2006(平成18)年12月20日(水)、航空・鉄道事故調査委員会(以下事故調)から「事実調査に関する報告書の案(意見聴取会用) 西日本旅客鉄道株式会社 福知山線塚口駅〜尼崎駅間 列車脱線事故(平成17年4月25日 兵庫県尼崎市において発生」(以下報告書案)が公表された。事故調のホームページ(http://araic.assistmicro.co.jp/)の左下にある「意見調査会」をクリックすると、本文1編、付図3図、用語集1編がダウンロード可能なページに行き着く。
 死亡者107人、負傷者555人を出したこの大事故についてはさまざまな原因が語られてきた。それだけに今回の報告書案は大事故の真相を究明するものとして各方面から大きな期待が寄せられていたと言ってよい。
 筆者も報告書案をダウンロードし、早速読み込んだ。当初は報告書案の概要と考察をまとめ、すぐにでも当ページで発表しようと考えていたが、何度も読んでいるうちに頭を抱え込んでしまった。
 報告書案に記されている内容はそう難しくはない。高校生はもちろん、この事故に興味を抱いた小、中学生でも理解可能だ。しかし、事故の原因として挙げられている一つ一つの要素、そしてそれらにまつわる担当者たちのコメントには唖然とさせられるものが多い。確たる科学的な根拠もないままに規則を定め、その規則がときには誤っていたり、運用を間違えていたのだ。
 報告書案を読んで頭を抱えた理由はまだある。今回の事故を起こしたJR西日本に対する事故調の「静かなる怒り」が如実に現されていたからだ。これまでにも筆者は古今東西の報告書や資料に込められた怒りを目撃してきた。しかし、それらの中でも今回の報告書案での怒りは最も大きなものと言ってよい。
 これほど感情的に記された原因は、調査段階で事故調が抱いたJR西日本への不信感、そして被害者の受けた苦しみの大きさに触れたからだろう。また、忘れてはならないのはこの事故がダイヤの遅れを取り戻すために起きたという点だ。
 実はこの事故のわずか1カ月半ほど前の2005(平成17)年3月2日、土佐くろしお鉄道宿毛線宿毛駅構内で同様の事故が発生した。遅れを取り戻そうとしていた「南風17号」が速度超過のまま、宿毛駅の車止めを突き破り、駅舎に衝突したのである。同種の事故が続いたうえ、2回目の事故があまりにも巨大な被害をもたらしたため、事故調も大きなショックを受けたに違いない。この際だからすべての問題を洗い出して解決していきたいという意気込みが感じられる。
 今回は報告書案に対する検証の入口だけしか示すことができなかった。大変恐縮だが、細目についての検証にはもう少々時間をいただきたい。


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