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津山線での脱線事故について

 2006(平成18)年11月19日(日)午前5時30分ごろ、JR西日本津山線(津山-岡山間58.7km、全線単線、非電化)の列車が岡山県岡山市下牧で脱線、横転する事故が発生した。この事故で運転士1人、乗客25人の合わせて26人の全員が負傷し、うち3人は入院したという。けがをされた皆様にお見舞いを申し上げますとともに一日も早いご回復をお祈り申し上げます。
 事故は津山4時29分発、岡山5時45分着の津山線の下り一番列車、941D(2両編成)が5時29分に牧山駅から隣の玉柏(たまがし)駅を目指して発車した直後に起きた。JR西日本の調査によれば、事故現場付近で縦約4.8m、横約5m、高さ約1.8m、重さ100t程度の落石が発見され、線路はゆがみ、レールは1カ所で破断していたという。
 運転士の証言によると、941Dは事故現場直前を65〜70km/hで走行中、線路上に障害物があることを発見したために非常ブレーキを作動させたそうだ。しかし、その直後に列車は進行方向右に大きく傾き、脱線したという。なお、事故現場の写真から、列車は落石には衝突していないようで、落石によって線路が破壊されたことから脱線、横転につながったのではないだろうか。
 一見するとこの事故は天災であり、JR西日本にとって避けられない事故だったように思われる。しかし、現時点で筆者は2つの疑問を抱いており、これらはぜひとも今後の調査によって明らかにしてほしいものだ。以下、疑問点を挙げていきたい。

疑問1 落石はいつ発生したのか

 941Dの直前に事故現場を通過した列車は、前日の11月18日(土)の23時34分に玉柏駅を発車し、牧山に23時43分に到着した972Dである。現時点でこの列車から何か異常が報告されたとは伝えられていない。したがって、落石は23時43分から翌朝5時30分までの間に起きたと見るべきだろう。
 問題は落石の発生時刻だ。列車通過よりもかなり早い時間、具体的には1時間以上前に発生していたとなると、JR西日本の線路の管理に不備があったと見られても仕方がない。
 ところで、線路と並行する県道は941Dが走行する時間帯には通行止めとなっていた。午前4時ごろ、岡山県警察岡山西署は県道が陥没しているとの通報を受け、それに伴って実施したものだ。陥没の原因は明らかではないが、線路を破壊した落石による可能性も考えられる。通行止めの情報は岡山西署からJR西日本に伝えられていなかったそうだ。

疑問2 なぜ列車を止められなかったのか

 「平成16年度 鉄道統計年報」(国土交通省監修、政府資料等普及調査会、2006年3月)428ページによれば、津山線の閉そく方式は全線が自動閉そく式であるという。自動閉そく式とはJISE3013の番号3010で「連続した軌道回路を設け,常置信号機の現示を列車によって自動的に制御する常用閉そく方式。」と定められている。
 ここで登場する軌道回路というのは「列車又は車両を検知するために,レールを用いる電気回路。」(JISE3013の番号7001)だ。この電気回路は列車の車輪によって短絡され、後方の主信号機(「一定の防護区域をもっている信号機で,場内信号機,出発信号機,閉そく信号機,誘導信号機及び入換信号機の総称。」、同番号2010)は停止を現示(「信号の指示内容を表すこと。」、同2003)する。
 レールが破断された場合、当然電気回路も寸断されるため、通常ならばこの付近の主信号機は皆、赤信号とならなければならない。JR西日本に限ったことではないが、レールの破断は比較的よく起きている。だが、多くの場合、大事に至らないのは軌道回路の働きによるところが大きい。
 単線区間なので牧山-玉柏間に閉そく信号機が設置されているかどうかは不明だ。しかし、少なくとも牧山駅に出発信号機は設置されている。特に何も伝えられてはいないが、この信号機が停止を現示していたのではないらしい。
 つまり、可能性は2つに絞られる。落石は941Dの牧山駅発車後に発生したか、あるいは落石によってレールが破断されても何らかの理由で軌道回路が構成されていたままだったというものだ。
 筆者は後者の可能性が濃厚だと考えている。落石によって線路が大きくゆがむほどの衝撃を受けたにもかかわらず、レールとレールを結ぶレール用継目板が壊れなかったのではないだろうか。しかし、この仮定にも疑問が生じる。レール用継目板が果たして重さ100tの岩石の落下には耐えられるのかというものだ。
 軌道延長62.4kmのうち50kgNレールが58.1kmを占める津山線では、曲線区間のレール用継目板は熱処理を施した2種50kgNレール用の50Hが用いられていると考えられる。JISE1102によると、50Hの引張強さは686N/岼幣紊覆韻譴个覆蕕覆い修Δ澄N鷦屬猟眠瓩砲浪燭量簑蠅呂覆い里賄然だが、落石は100tだった。破損しないほうが不思議だ。
 本稿を執筆している11月20日午前0時30分現在の状況は以上である。今後また何か新たな情報が得られたら、そのつど考察していきたい。

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