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JR東日本の651系は欠陥車両ではない その2

特殊信号発光機は停止信号を現示。しかし、運転士は……

 2006(平成18)年9月9日付けの当欄では2005(平成17)年4月26日(火)にJR東日本常磐線羽鳥(はとり)駅構内(茨城県東茨城郡美野里町、現在は茨城県小美玉市)で発生した踏切障害事故の真の原因は特殊信号発光機が停止信号を現示(信号が指示している内容)しているにもかかわらず、車両の非常ブレーキが自動的に作動しなかったからであると記した。これがどういうことなのかは国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(以下委員会)がまとめた鉄道事故調査報告書(以下報告書、http://araic.assistmicro.co.jp/araic/railway/report/RA06-4-9.pdf)を読み解く必要がある。
 651系の運転士は石岡駅を定刻の12時46分に通過し、5381m走行した後、羽鳥駅まであと1079mの地点まで到達した。この地点には羽鳥駅の手前165mに建てられている場内信号機(駅、信号場、操車場に進入しようとする列車にその可否を伝える信号機)の喚呼(声に出して確認すること)位置標がある。
 ところが、運転士は場内信号機が進行信号であることは確認したものの、喚呼は行わなかったという。前方の踏切に障害物らしきものを発見したからだ。同時に踏切に設けられた非常押しボタンを押すことで作動する特殊信号発光機が停止信号を現示していたのを見落としてしまう。
 特殊信号発光機とはJISのE3013番号2050によると、「列車を緊急に停止させる必要がある場合に,発光信号を現示する装置。」とある。報告書によると5個の電球が五角形状に並べられたものとあるが、どのように停止信号を現示していたのかまでは説明されていない。株式会社三工社の資料(http://www.sankosha-s.co.jp/seihin/pdf/tokusyu.pdf)によれば、赤色灯が点滅しながら回転するのだそうだ。
 場内信号機を確認できたにもかかわらず、その20m手前に設けられ、しかも格段に目立つ特殊信号発光機の停止現示をなぜ見落としてしまったのかという理由はわからない。何にせよ、もしも特殊信号発光機の停止信号を確認できたのならば運転士は即座に非常ブレーキを作動させたはずだから、故意に停止させなかったということはまずないだろう。

踏切障害事故の根絶は、自動的に列車を停止させる装置の導入から

 この踏切障害事故で委員会が問題視していないことがある。それは、特殊信号発光器が停止信号を現示したならば、ATS(自動列車停止装置)のように運転士の意思に関係なく、即座に列車を止める装置が導入されていないという点だ。
 たまたま手元にある資料から引き合いに出すと、東武鉄道にはこのような仕組みが導入され、同社は踏切防護用ATS装置と呼んでいる。遮断機の降りた踏切道に人や物が取り残されてしまった場合、非常押しボタンを押さなくても、センサーが支障を検知し、ATSを作動させるという。ただし、東武鉄道でもすべての踏切道がこのようなシステムとなっているのではない。自動車が通行できる踏切道だけに限られ、しかもその設置工事も今年度の2006年度になってようやく完了するのだという。
 2003(平成15)年度に全国すべての鉄道会社で発生した踏切障害事故の数は403件。踏切道上に立ち往生した人のうち、124人の方々が亡くなり、120人の方々が負傷し、衝突した列車に乗車していた利用客のうち、12人の方々が負傷した。国土交通省は踏切道の対策(http://www.mlit.go.jp/road/sisaku/fumikiri/fu_04-2.html)に取り組んではいるものの、どうも不十分な気がしてならない。
 究極の解決法は踏切道をなくし、立体交差化することだが、それはなかなか難しい。せめて、交通量の多い踏切道だけでも立ち往生しただけで自動的に列車を止める装置の導入を義務付ける必要がある。それでも、列車の通過直前に踏切道に進入したとなると踏切障害事故を避けることは困難だ。しかし、十分な制動距離があるにもかかわらず、衝突してしまうとはやりきれない。そのやりきれない事故はいつ根絶できるのだろうか。

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