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メートル法はどのようにして導入されたのか

 言うまでもなく、日本の鉄道はメートル法を採用している。近年は国際単位系(SI、System International d'Unitesの略)の導入も進み、いままで親しまれた馬力(PS)からkWへといった切り替えも進行中だ。
 明治5年5月7日(旧暦、新暦の1872年6月12日)に品川-横浜(現在の桜木町)間が開業して以来、日本の鉄道は2006(平成18)年の今年で134年の歴史を積み重ねてきた。そのうち、JRの前身である国有鉄道がメートル法を用いるようになったのはいまから76年前の1930(昭和5)年4月1日から。1872年から1930年までの58年間はヤードポンド法を使用していたのである。
 列車の運転に常用される本線には、1kmごとに起点からの距離を示す距離標を設けなくてはならない。俗にいうキロポストだ。しかし、1930年3月31日までは距離標には1マイル(=1.609344 km)ごとの距離を記したマイルポストが建てられていたのである。
 問題はここからだ。ヤードポンド法からメートル法への転換は何年にもわたる周到な準備の末、1930年3月31日から4月1日にかけて一斉に実施されたに違いない。全国に無数に存在するマイルポストを抜き、新たにキロポストを設置するなど、想像するだけでも膨大な手間と費用をかけたはずだ。にもかかわらず、当時の国有鉄道を運行していた鉄道省(現在の国土交通省)は何の記録も残さなかった。正確に言うと記録を作成したのかもしれないが、散逸したために切り替え当日の様子をうかがい知ることができないのだ。
 メートル法への切り替えを含め、日本の鉄道は過去に3回の大転換を行ってきた。残る2回とは1925(大正14)年7月15日と16日の2日間で実施したねじ式連結器から自動連結器への一斉交換、そして1987(昭和62)年4月1日の国鉄の分割民営化である。前者の様子は『鉄道車輛ノ連結器ヲ自動連結器ニ取替ニ関スル記録 大正十四年七月実施』(鉄道省、1928年)から知ることができるし、後者に関してはいまさら言うこともないだろう。
 日本の鉄道の「三大切替史」のうち、最も知名度が低く、なおかつ最も謎に包まれているメートル法への大転換をルポしようというのが今回の企画である。といっても調査は難航するだろう。当時を知る関係者に話を聞こうとしても76年も前のことなので存命者が極めて少ないと予想されるからだ。
 しかし、困難だからこそやりがいのあるテーマだと考える。もしも、これからルポライターとして身を立てていきたいとお考えの方がいらしたら、ぜひともこのテーマをご検討いただきたい。仮に筆者が鉄道雑誌の編集長だったら、いや一般誌の編集長であっても、緻密な調査と正確な記述がなされた原稿を目の当たりにすれば次号からの連載開始を即断するだろう。
 ここでお断りがある。今回のテーマは石野哲氏が『停車場変遷大事典 国鉄・JR編 I』(JTB、1998年10月、P63-P64)で示された疑問点をもとに作成させていただいた。石野氏の記述がなければ、メートル法への大転換についての疑問など筆者は永遠に抱くことはなかっただろう。この場を借りて感謝したい。

日本最長の貨物列車を追え!

 日本最長の列車というと大阪-札幌間の「トワイライトエクスプレス」の1502.5km(営業キロ)がよく引き合いに出される。だが、それは違う。正解は札幌貨物ターミナル駅と福岡貨物ターミナル駅とを結ぶコンテナ貨物列車(千歳、函館、江差、海峡、津軽、奥羽、羽越、白新、信越、北陸、湖西、東海道、山陽、鹿児島線経由)1往復。その距離は2127.7kmだ。残念ながら愛称名はない。札幌から福岡へと向かうのが3098〜2071列車、その反対が2070〜3099列車である。どちらも大阪府吹田市にある吹田信号場で列車番号が変わってしまう。ここを境に上り列車から下り列車としておかないと不都合が生じるからであり、日本列島を縦断している証拠でもある。
 2本の最長列車のうち、所要時間が長いのは2070〜3099列車だ。福岡貨物ターミナル1時53分発、札幌貨物ターミナル21時20分着で、何と43時間27分も走り続けている。ちなみに、3098〜2071列車の所要時間は37時間47分だ。
 今回の「企画アリ!」ではこの列車の追跡ルポを取り上げたい。通常、貨物列車のルポは機関車の運転台に添乗するのが定番だ。とはいえ、これでは主役であるコンテナの状況がわからない。旅客列車に乗りながら追いかけてみよう。
 2070〜3099列車は途中、北九州貨物ターミナル駅と新潟貨物ターミナル駅とで貨車の連結と切り離しを、広島貨物ターミナル駅、富山貨物駅、秋田貨物駅の各駅でコンテナの積み卸しを行っている。貨車の動向や積まれているコンテナの増減、さらには途中で繰り返される機関車の付け替えなどからこの列車の特徴をつかむ。大げさにいえば日本の物流の一場面を垣間見ることができるといえよう。


 追跡に必要な行程を表のとおりまとめてみた。ご覧のようにハードスケジュールそのもので、趣味で実行するのは難しいだろう。ふと思ったのだが、この追跡ルポは北海道テレビ放送系の人気番組、「水曜どうでしょう」の趣旨に近いのではないだろうか。ミスターこと鈴井貴之といまや大スターの大泉洋とが1本の貨物列車をめぐって珍道中を繰り広げるシーンが目に浮かぶ。ぜひともその様子を観てみたい。

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